船舶の省エネ装置・プロペラボスキャップフィンズ

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    ウインドアシストPCTCの開発

    ウインドアシストPCTCの開発
    田中 良和(商船三井テクノトレード㈱ 専務取締役)

     

    風圧抵抗を軽減するのみならず、風向きにより前進力(スラスト)を得ることで従来船より 約6%の効率改善する船型をご紹介します。

    とりわけ上部構造の受風面積が大きく、風圧抵抗が推進性能に及ぼす影響の大きい自動車運搬船(PCC)を対象に、風圧抵抗低減船型の検討を実施した。検討が始まった時に図. 1に示す“ISHIN-I”を10年前に発表しました。その後改良し推力を発生する船型として図.2を開発しました。

     

     

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    船首部と上甲板サイド形状の特徴と効果について

     正面風圧力低減を目的として、これまで船首端部を斜めにカットアップし流れを整流する等の風圧抵抗低減検討はSHIP OF THE YEARを頂いたCOURAGEOUS ACEで実現しました。その船型は既に業界のデファクトスタンダードになっています。

     しかしこれまでの船型においては、船橋部分は上部構造とは分離した形状となっていました。そこで船橋部分を船体に埋め込むことで、正面風圧抵抗の低減効果を高め、さらに前進力として推力を得ることに成功しました。

     推力が最大の時は正面の風圧抵抗の2倍の推力を発生し。最大推力は60度の斜め向かい風の時に発生します。推力は斜め向かい風の40度から真後ろ迄の広い範囲で発生する優れた船型となっています。図3の斜め向かい風の圧力分布図をご参照ください。

     また上甲板の船側部には全長に渡り段差を設け隅切り部分を設けています。こうすることで斜め風や横風の風況下でコーナーからの流れの剥離が抑えられ、横風による影響が低減されます。その結果、PCCで顕著に現れる斜航が緩和され、風外力による横力をキャンセルすべく起こる斜航(横流れ)が減じられ、結果として水中の抵抗を削減できます。すなわち燃費効率の向上がもたらされる船型になっています。

     

    船尾形状の特徴と効果

    一般的なPCCの船尾形状は箱型のビルのように角張っています。これは自動車の積載台数を最大にするです。一方で船尾形状が箱型であるがゆえ、航行中に船尾では空気抵抗が増大し渦を巻く流れが発生しています。この渦による船尾の負圧で直進方向とは逆方向に船体を引っ張る力が発生し、大きな抵抗になっています。そこで航行中船尾に発生する渦を整流化し推進性能を向上させる形状として、ランプウェイ一体型の涙滴形状船尾を有する船型を考案しました。図2をご参照ください。

     

    その結果、従来型船型と比べて北太平洋横断航路の平均海象(風力)のシミュレーションで約6%の省エネを達成することが出来ました。

     

    尚、本船型は(株)商船三井、(株)三井造船昭島研究所、と当社で開発しました。特許も取得できました。現在商船三井でこの船型を実船に採用するべく検討されています。

     

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